


今年の1月29日から2月1日まで、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会第10回会合が、フランスのパリで行われ、IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、第1作業部会報告書本体が受諾され、2月2日、IPCCより公表されました。今回は、その内容について簡単に触れていきたいと思います。
今回の報告書概要では、大きく分けて三つの内容が発表されています。一つめは、気候システムの温暖化は疑う余地がないこと、二つ目は、その温暖化は人為起源である確率が90%以上であること、そして、最後に気象モデルでの予測では、21世紀末には平均気温が1.8℃〜4.5℃上昇する可能性がかなり高いというものです。
1.気候システムの温暖化は疑う余地はない
概要の中で、次のように述べています。
気候システムの温暖化には疑う余地がない。このことは、大気や海洋の世界平均温度の上昇、雪氷の広範囲にわたる融解、世界平均海面水位の上昇が観測されていることから今や明白である。 そして、その根拠として、下記のデータを上げています。
また、大気や海洋の世界平均温度の上昇と世界平均海面水位の上昇については、大気中の平均水蒸気量が1980年代以降上昇していること、少なくとも水深3000mまでの全海洋の平均水温が上昇していて、この昇温が海水を膨張させ、海面水位を上げていることなどを挙げています。ちなみに、20世紀の海面水位の上昇は、0.17m(17cm)としています。
雪氷の広範囲にわたる融解については、山岳氷河と積雪面積が平均すると縮小していて、氷河や氷帽(氷帽にはグリーンランド及び南極氷床は含まれていない)の減少が海面水位の上昇に寄与したとしています。そして、グリーンランドと南極の氷床の減少が海面水位の上昇に寄与した確立は90%以上だと指摘しています。
2.地球温暖化は人為起源である確率は90%以上
20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い。これは、第3次評価報告書での「過去50年にわたる、観測された昇温のほとんどが温室効果ガス濃度の上昇によるものであった可能性が高い」との結論を進展させるものである。識別可能な人間の影響が、気候の他の側面(海洋の温暖化、大陸規模の平均気温、極端な高低温、風の分布)にも及んでいる。
文章中では、「可能性がかなり高い」という表現が使用されています。本概要の注釈によると、「可能性がかなり高い」の表現は、確率が90%以上であるとあります。「ほぼ確実」が確率99%以上、「可能性が極めて高い」が確率95%以上、そして、「可能性が高い」が確率66%以上としています。従って、第3次評価報告書で使われた「可能性が高い」(確率66%以上)の表現よりも一段と強い表現である「可能性がかなり高い」(確率90%以上)が使われたことになり、第3次評価報告書以降の新データからより人為起源であることが明確になってきたと述べています。
地球温暖化に関与している温室効果ガスで重要なのは、二酸化炭素とメタン、そして一酸化二窒素だとしています。このうち、「二酸化炭素は最も重要な人為起源の温室効果ガスである」と指摘しています。二酸化炭素の大気中濃度は、工業化以前(1750年以前)に比べ、135%増加の379ppmに達しており、過去65万年の自然変動の範囲(180〜300ppm)をはるかに上まわっているとしています。二酸化炭素の排出原因は、化石燃料の使用と土地利用の変化だとしてますが、土地利用の影響は少ないと言っています。化石燃料の使用は、前にも述べたとおり、プラスチック用途は全体の7%程度に過ぎず、圧倒的に燃料としての消費が多いのです。それも自動車の燃料としての使用が大きな割合を占めています。国別で見ると、消費国1位は、アメリカで他を大きく引き離しています。また、アメリカを追従しそうなのが、中国で、この二つの国が京都議定書に参加していないことが今後大きな問題になってきます。
メタンも工業化以前に比べ242%伸びています。しかし、メタンの大気中濃度は、二酸化炭素に比べ100分の1少ないオーダーであり、1990年代以降その増加率は鈍化していて、現在はほぼ一定に収まっているとのことです。一酸化二窒素は主に農業からの排出で、1980年以降一定に維持されていると述べてます。
そして、これらの人為起源の温室効果ガスの影響を踏まえないと、工業化以降の温暖化は説明がつかないとしています。この報告書では、平衡気候感度という言葉が用いられていて、二酸化炭素濃度が倍増したときの世界平均気温の上昇量と定義されています。この平衡気候感度は、2〜4.5℃の範囲(最良の見積もりでは約3℃)である可能性が高いとしています。そして、1.5℃以下になる可能性はかなり低く、逆に、4.5℃以上になる可能性は否定できないとしています。
3.21世紀末には平均気温が1.8℃〜4.5℃上昇する可能性がかなり高い(確率90%以上)
この報告書では、6つの排出シナリオが用意されていて、それぞれのシナリオに沿った平均気温の上昇を予測しています。それによると、最も排出量の低いシナリオでも1.8℃の上昇があると予測されています。逆に、最も排出量の高い予測では気温の上昇は4.5℃で、これ以上になる可能性も否定できないとされています。上述の平衡気候感度の考え方を借りれば、二酸化炭素濃度が倍増もしくはそれ以上になる可能性もかなりあるということです。
最も排出量の低いシナリオB1は、地域格差が縮小した世界であり、21世紀半ばに世界人口がピークに達した後に減少するが、経済構造はサービス及び情報経済に向かって急速に変化し、物質志向は減少し、クリーンで省資源の技術が導入されるというものです。また、経済、社会及び環境の持続可能性のために世界的な対策に重点が置かれるとしています。このシナリオは、かなり理想に近いシナリオであるといえそうです。ここで重要なのが、物質志向の減少という表現です。物質志向の減少は、流通の縮小化を生み、化石燃料の消費が抑えられることを意味しています。ここでは、触れられていませんが、人の移動もある程度少なくなっていることを想定しているのかも知れません。つまり地域社会への移行を踏まえている可能性があります。
最も排出量の高い予測(A1FI)は、高度経済成長が続き、世界人口が21世紀半ばにピークに達した後に減少し、新技術や高効率化技術が急速に導入される未来社会を描いています。主要な基本テーマは、地域間格差の縮小、能力強化(キャパシティービルディング)及び文化・社会交流の進展で、一人当たりの所得の地域格差は大幅に減少するとしています。ただし、エネルギーシステムにおける技術革新の選択肢は化石エネルギー源を重視するというものです。このシナリオが、今の経済社会の理想像に一番近いかも知れません。しかし、化石エネルギーに依存することから、人と物の移動は現在と同じ自動車や飛行機などで行われることを意味し、当然の事ながら今の二酸化炭素排出量は減っていかないことを意味しています。
さて、この1.8℃〜4.5℃の気温の上昇は、何をもたらすのでしょうか?一例として挙げられているのが、グリーンランド氷床の消滅です。上記の気温上昇が続くと、気温の上昇による氷の質量の減少が、降水による増加を上回り、表面の質量収支が負に転じるとしています。この場合、グリーンランド氷床が完全に消滅して、海面水位が7m上昇すると予測しています。
4.終わりに
本報告書の日本語訳は、気象庁のホームページで公開されています。
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/index.html
詳細を知りたい場合は、気象庁のホームページにアクセスしてみて下さい。本文では触れなかったのですが、この報告書で個人的にインパクトがあったのは、現状の二酸化炭素排出量を維持しても、数世紀にわたって気温上昇が続くことです。今までの二酸化炭素排出量のうち、かなりの部分を海洋が吸収してくれています。しかし、この海洋の温度変化は、数世紀単位で変化し、これをコントロールすることは非常に難しそうです。従って、今すぐにでも二酸化炭素排出量を抑制していかないと数世紀先には、まったく予想のつかない地球が存在することになります。今のまま地球温暖化を無視して経済発展を目指しても、どんなかたちであれ地球は存在し続けるでしょう。しかし、人類にとって人間が生存し得ない地球は何の価値もないような気がします。
では、私たちは何が出来るか、何をしたらいいでのしょうか?まず、考えられるのは、製造にかかるエネルギー使用量を下げることです。弊社草加工場では、平成17年から天然ガスコージェネレーションシステムを導入し、稼働させています。平成17年度には、このシステムにより、二酸化炭素排出量を約454トン減らすことが出来ました。
次に耐久性のある製品を開発していき、お客様に長く使用してもらうことです。例えば、クリアターポリン®シリーズのサンドリーム®は、黄変しやすかった透明ターポリンの寿命を劇的に延ばすことに成功しています(促進試験結果で9年相当黄変なし)。また、去年から発売を開始しましたウルトラマックス®クールは、十分な耐久性(キセノン促進試験[屋外5年相当]で、引っ張り強さほぼ100%の強度保持率)を持ちながら、遮熱性を付与することで、夏場の暑さを軽減し、膜材使用時のエネルギー使用量削減に配慮した設計が可能になっています。
これらの製品を活用し、環境に配慮した商品をお客様に提供していただければ、私どもともども、地球温暖化対策に貢献していることになると思います。ぜひ、地球温暖化対策を考慮したシート選び、商品設計をお願いいたします。