


前回までは、国が環境に対して、今後どういう方向へ進もうとしているのかを述べてきました。今回から何回かに分けて、現状どういう環境問題があるのか、そして、それに対してどう取り組まれているのかを紹介してゆきたいと考えています。
私が、大学を卒業して早20年が経とうとしています。私たちが学生だった頃、そのカリキュラムに環境という文字が入ったものはありませんでしたし、公害問題も一段落したころでした。最近、ホームページで環境というキーワードで検索しますと、大学のホームページにヒットすることが増えてきました。カリキュラムの中に環境科学という新しい学問が登場しているのです。この環境科学という学問はどんなことを扱っているのでしょうか。実際環境科学の授業用に書かれた日本化学会編「環境科学」(東京化学同人刊)の目次を見ますと、
と続きます。これは、大学の教養学部で使用される教科書ですから、文系の人も、理系の人も学ぶ形になります。したがって、今後会社に入ってくる世代の人たちは、何らかの形 で環境について学んでいるということになります。
さて、大学生たちはどんなことを学ん でいるのでしょうか。上記記載の「環境科学」の第1章を見てみましょう。
淑徳大学教授 北野 大著
北野教授は、皆さんもご存じの北野武さんのお兄さんです。北野教授は、環境省が主催している化学物質と環境円卓会議のメンバーであり、環境科学関係での第一人者であります。この章では、「地球の誕生からはじまって、人類は地球にどのように存在し、そして人類は今後どのように地球と向かい合い、豊かさを求めていくべきか」が書かれています。
まず、地球上に生物が生存できていることについて、「太陽系の中で液体としての水、水圏を有しているのは唯一地球のみであり、この水圏に生物が発生し、光合成により二酸化炭素と水が炭水化物と酸素に変換していった。そしてこの酸素から太陽光との反応によりオゾンが生成し、このオゾンが太陽からの有害な紫外線を遮断し、地上での生物の生存を可能とした。」と書かれており、太陽系の中でも地球が非常に特異な存在であること、また、 この環境は当然のことながら人類が作ったものではないことが示されています。
次に、地球の歴史と人類が地球に対してどういう環境負荷をかけてきたかを地球の年代別に記載されています。紀元前2000年頃、灌漑農業による乾燥が元になって崩壊したシュメール文明。紀元前1200年頃、森林伐採により表面土壌が流失し、作物の収量が悪化し、人口が激減したミケーネ文明。6世紀ごろ、森林伐採により湿原が増大し、ヨーロッパでマラリアが大流行したことなど、「人類は燃料、木材として森林破壊を続け、結果として表面の肥沃な土壌が流出し、食糧不足に陥り、人口も減少し、文明衰退の一因をつ くってきた。」ことが書かれています。
現在の人類が環境をどのように変えてきたかでは、温暖化、森林破壊、砂漠化、生物多様性の現象をあげています。そして、これらの現象には、「物の豊かさ」に対する人類の欲求が大きく係わっているとしています。21世紀に入った今、昭和20年代に比べ、物に対する満足度はかなり高まってきており、これからは「心の豊かさ」を求めて行くべきだと結んでいます。
もうひとつ、この章の中で、エネルギー消費に関して触れているところがあるのでご紹介します。「人類、特に産業革命以降は時間をエネルギーに置き換えてきたといえる。すなわち、大量のエネルギーの投入により、所要時間を短縮してきたわけである。例えば、100kmの距離を移動する場合、徒歩では約25時間、必要とされるカロリーは約3000kcalである。これを自動車で移動するなら、時速100km、燃費を10km/リットルとすると移動のために必要な時間は1時間、必要とするガソリンは10リットル、90,000kcalとなる。すなわち87,000kcalの追加的なエネルギー投入により24時間短縮している。」と書かれています。
人類は、太陽エネルギーの利用から化石燃料という地下資源エネルギーにシフトすることによって、大量のエネルギーを獲得できるようになりました。ただし、この地下資源は有限であり、何れ枯渇する危険性をはらんでいます。ここで書かれている「エネルギー投入による時間の短縮」については、効率性をもっと重視するとか、必要以上の使用は控える(ラッシュ時の車通勤)など真剣に対応が求められていると思います。
次回は、2章 人間はどこまで長生きしたいか、に関して紹介します。