

皆様にお買い上げいただき、お使いいただいている私たち平岡織染が生産する製品群は、帆布にしても、ターポリンにしてもほとんどが石油から作られた原材料を使って製造されています。何とこれらシート類の石油依存度は80%にも達しているのです。最近の2年間で見ますと、原油指標のドバイ原油価格が1バレル28.6ドル(2004年4月)から64.3ドル(2006年4月)と2倍強となり、それに連動してシート類原材料のもとであるナフサ(粗製ガソリンと云われる)価格も上昇を続けてきました。
石油やナフサとはどんなものなのでしょうか。石油は、種々の炭水化物が複合した液体状の物質のことで、太古の植物や動物の死骸がバクテリアなどによって分解されて蓄積したもののようです。石油は、非常に長い月日をかけて形成されます。自然界でできたものなので様々な炭水化物が含まれていて、それを精製することでいくつかの炭水化物群に分けて、我々は石油を使用しています。その中でもナフサは、沸点温度が30〜200℃の範囲にある成分を蒸留したものです。ナフサはさらに、エチレン、プロピレン、ブタジエンといったオレフィンに分解されます。そして、これらのオレフィンを基礎原料として様々な化学製品が作られているのです。

石油から精製されるのは、ナフサを初めとして、ガソリン、灯油、軽油、そして重油です。このうち、ナフサは約8%しか蒸留されていません。ちなみに重油が29%で最も多く作られ、次いでガソリンが24%、軽油が16%、そして灯油が12%です。ナフサ以外は、ほとんどが燃料、いわゆるエネルギー資源として使われています。長い月日をかけて蓄積されたものを一瞬のうちに使ってしまうわけです。石油が蓄積される時間と消費される時間を比較すると急激に枯渇の方向に向いていることは明らかです。燃料としての使用に比べ、我々のようにシートにして使った場合、10年単位での石油の利用が可能ですが、それでも、石油になるまでの時間を考えると非常に短い時間しか使用していないことになります。今後、国家ベースで石油に依存しない社会を構築することが求められていくと推測しています。その中で、私たちも石油から生まれてくる製品群をどう維持していくかを真剣に考えなければならないと思っております。
今日は、原油価格の変動が、皆様にお使いいただいている製品群に与える影響が如何に大きいかを理解していただくために、石化資材と塩ビ製品との関係を簡単に説明させていただきたいと思います。
まずは、塩ビ樹脂(ポリ塩化ビニル樹脂PVC)です。塩ビ樹脂は、シートに防水性を初めとする様々な機能を持たせることができる樹脂で、私どもの主力製品の全てに使用されていると言ってもよいと思います。例えば、テント倉庫用膜材料(私どもの製品ではウルトラマックス®(国交省認定品)などがあります)は、塩ビ樹脂を主成分としたコーティング材が製品重量の約60%を占め、そのうち、塩ビ樹脂は約60%を占めます。この塩ビ樹脂は、どうやって作られるのでしょうか?
石油から精製されたナフサを原料としてエチレンが作られます。このエチレンに工業塩から取り出した塩素を加え、二塩化エチレンを作り、塩ビモノマーを経て、塩ビ樹脂となります。
工業塩は、現在はほとんど輸入に頼っている状態です。工業塩から塩素を取り出すときに苛性ソーダも合わせて作られるので、塩素は、苛性ソーダの生産に合わせた形で生産されることが多いようです。
塩ビ樹脂は、他の石化樹脂(ポリエチレンやポリプロピレンなど)と違い、重量%で半分以上が石油に由来しない塩素で構成されています。従って、塩ビ樹脂の石油依存度は、約45%となります。
次に可塑剤です。塩ビ樹脂自体は、非常に硬い樹脂なのです。塩ビ樹脂の代表的な用途は、塩ビ管で、主に水道、下水道管として使用されています。弊社の製品のようにフレキシブル性(柔軟性)を樹脂に持たせるには、可塑剤という一種の油成分を加える必要があります。可塑剤を加えたフレキシブル性のある樹脂を軟質塩ビ樹脂と呼んでいます。ちなみに、水道管などに使用される塩ビ樹脂を軟質塩ビ樹脂と区別するため、硬質塩ビ樹脂と呼んでいます。可塑剤には色々な種類があり、耐寒性に優れるもの、難燃性を付加できるもの、揮発性の低いもの、汎用性に富むものなどがありますが、何れの可塑剤もナフサから作られます。従って、可塑剤も石油から生まれると言ってよいでしょう。
そして、最後に合成繊維(主にポリエステル繊維)です。シートの基本的性能を支えているのは、合成繊維で織られた生機(織物)です。この合成繊維も全てナフサから作られます。例外なのは、不燃材料(私どもの製品ではターポロン®G3500(国交省認定品)などがあります)に使用されている生機で、これは、石油に依存しないガラス繊維で作られています。その他に最近脚光を浴びている植物から作られる繊維(バイオマス繊維)のポリ乳酸繊維(トウモロコシなどを原料としている)、竹繊維、ケナフ繊維などが商品化されていますが、我々の産業資材用途に使用するには、まだ十分な性能が得られていないのでアパレルなどの比較的強度を必要としない用途に使用されています。
これらの塩ビ樹脂、可塑剤、そして合成繊維で、シートの石油依存度は約80%になります。従って、シートは大きく石油に依存していることになります。
このように石油に依存しているシートをどうのように維持していけばよいのでしょうか。初めに触れたとおり、現在のように、大量消費型の社会を続けていると21世紀中に石油は枯渇すると云われています。石油の用途の80%以上がエネルギー資源としての利用なので、石油に依存しないエネルギー体系を確立していくことが求められています。そして、大量消費型社会から持続可能な循環型社会に社会構造を変えていく必要があります。
私ども平岡織染は、まず、無駄をなくすこと(リデュース)を実践しています。そして、なるべく効率的な生産体制を組み、エネルギー資源の無駄遣いをなくす体制を組んでいます。しかし、リデュースだけでは、持続可能な循環型社会の実現は難しいと感じています。将来的には、リユース(一定期間リースで使用後回収し、洗濯、補修して使用する)やリサイクルできる商品の開発が求められてくると予測しています。リユースは、建築養生シートやフレキシブルコンテナなどの一部の用途で実際に利用されています。これらの製品群は、リユースを前提に設計されています。
リサイクルに関しても調査を進めています。ただし、私どもの製品は複合材料であり、根本的な設計の見直しが必要になってくると考えています。リサイクルには、必ずエネルギーが必要です。新規に製品を製造するよりもエネルギーコストがかかってしまうと元も子もありません。従って、エネルギーコストをかけずにリサイクル可能なリサイクル技術の確立とそれに見合った設計が必要になります。また、バイオマス素材に関しても調査を行っております。私どもは、製品に使用できるバイオマス素材について今後も研究を重ねてまいります。
以上のように、社会の転換期にさしかかってきた今の時代は、これがベストといった唯一の対応策はありません。あらゆる方向から製品や生産、そして、使用方法を見つめ直し、社会に順応していく必要があると私どもは考えています。