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環境ホルモン問題の最近の動向

 環境ホルモンという言葉を当たり前のように使うようになったのは、いつ頃からだったでしょうか。米国の動物学者シーア・コルボーンらにより平成8年(1996年)に刊行された「Our Stolen Future(邦題:奪われし未来)」では野生生物における化学物質による深刻な影響が取り上げられ、人に対しても同じような作用があるのではないかと懸念されて大きな反響を呼び、その後平成10年に現在の環境省(当時は環境庁)が「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」(以下SPEED'98)を発表しています。ですから平成10年(1998年)ごろから使われ始めたようです。


  一昨年12月に行われた第7回内分泌かく乱化学物質の国際シンポジウムで環境ホルモン作用が疑われる化学物質リストの調査結果が発表され、調べられた25種類の物質について「人体への影響は見られなかった」とされました。幌やテントシートなどは、その風合いを維持するため、可塑剤という油成分を使用しています。この可塑剤として汎用的に使用されているフタル酸エステル(DEHP)も上記リストに入っていたのですが、この時点で「人体への影響は見られなかった」とされました。その後、産総研(独立法人産業技術総合研究所)化学物質リスク管理研究センターが、詳細リスク評価書「フタル酸エステル-DEHP-」を丸善(株)から平成17年1月に発行し、人に対するリスクは、特殊な医療治療や職域でのケースを除いた、一般の人(0歳から成人まで)についての評価を行った結果、「現状においてリスクは懸念されるレベルにはない」という評価を出しました。(可塑剤工業会ホームページhttp://www.kasozai.gr.jp/main/main5/news16.html参照)

  環境省は、これらの結果をもとに、ExTEND2005を発表し、新たな取り組みをスタートしています。大きく変わった点は、SPEED'98のように疑わしいリストを作成するのではなく、

  1. 全化学物質を対象とする、
  2. 環境ホルモン作用がどのようなメカニズムで起こるのかを調べる基礎研究を行う、
  3. 環境中にどの程度その化学物質があり、暴露される可能性がどのくらいあるを調べ、その上でリスク評価を行う、
  4. そのリスク評価の結果を、「影響をもつ可能性の少ない物質」、「人間以外の生物に影響がありそうな物質」、「人間に影響がありそうな物質」に分類する、
  5. 情報公開を積極的に実施し、リスクコミュニケーションを推進する。

としていて、SPEED'98のように疑わしいというだけでリスト化するのをやめ、対象を全化学物質とし、リスク評価の目的を生態系への影響に広げ、有害性評価と暴露評価の両方を行った上でリスク評価を行うことになった点です。これは、SPEED'98で行われた評価結果で、実際のホルモン物質(私たちの体から排出される女性ホルモンや男性ホルモンなど)の内分泌かく乱作用に比べ、実際に内分泌かく乱作用が認められた化学物質(ダイオキシン、ノニフェノールやDDTなど)の作用が非常に小さい(普通では考えられないくらいの大量暴露がないと作用が認められない)ことがわかり、逆に本来のホルモン物質の生態系への影響の方が懸念されるようになったためです。国際シンポジウムの名称も第8回から「化学物質の内分泌かく乱作用に関する国際シンポジウム」となり、内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン化学物質)という言葉を使用していません。


  環境省の「化学物質の内分泌かく乱作用に関するホームページ」(http://endocrine.eic.or.jp/index.html)にも、

   物質には、色々な作用があり、“内分泌かく乱作用(環境ホルモン作用)”だけをもつ化学物質というのは、考えにくい。ある物質について、その物質がもつ“内分泌かく乱作用”のみを取り上げて、「内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン化学物質)」という言い方をするのは、適切ではありません。


と説明されています。


  従って、日本に関して言えば、環境ホルモン化学物質といわれていたものに現状よりも厳しい規制がかけられる可能性はかなり低いと考えていいと思います。
  ただし、EUでは、おもちゃに対するフタル酸エステルの規制がまだ解除されていませんし、中国では最近(平成17年12月)ラップフィルムへのDEHAの使用が禁止されました。従って、世界的にはまだ誤解が解けていない地域があるため、輸出する場合は、十分にその国の規制事情を調査した上で対応した方が良さそうです。

 

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