

ある量を表すとき、比較の基準とする同種の量を「単位」と言います。例えば、重さを表す単位としては、キログラム(kg)、グラム(g)、長さを表すのであれば、メートル(m)、センチメートル(cm)などがあります。日本では、昔は重さの単位として貫目(カンメ)、長さとしては尺が使われていましたが、国際的な単位統一の流れの中で、順次使用方法、表記方法が変更されてきました。平成に入って日本のJIS規格が国際規格であるISOに統一されて行く動きが強まり、私達が扱う繊維産業資材についても慣例的な使い方からISOに準じた表記方法へ切り替えて行くことが求めらるようになりました。ISO規格では、単位として、SI単位系を使用しています。これは、1960年に国際度量衡総会で従来使用していたメートル法単位系を拡張した国際単位系としてSI単位系を採択したことに由来しています。今回の表記方法の変更はこれに沿った形になっています。
強さ、つまり力を表す単位として、繊維業界は、キログラム重(kgf)という単位を慣例としてずっと使用してきました。これは、繊維業界だけではなく、建築業界や自動車業界でも同様です。ところが、今ISOへの統一のため、SI単位系のニュートン(N)という単位を使用することが求められています。ところで、ニュートンからリンゴを連想された方はいらっしゃるでしょうか?もしいらっしゃったとしたら当たらずとも遠からず、ニュートン(N)は、リンゴの実が木から落ちるのを見て万有引力を発見したあのニュートンの名からとったものです。ニュートンは、記号[N]で表します。力は、加速度と質量(重さ)とを掛けたものです。加速度とは、速度の変化率のことです。自動車を運転しているときに、時速40キロから時速60キロに加速するなどと言いますが、このときの加速を時間単位で割ったものが加速度です。例えば速度を10m/s(メートル・パー・セカンドと読み、1秒間に10m進む意味です)から20m/sに10秒間で速度を上げたときの加速度は、(20(m/s)―10(m/s))÷10(s)=1(m/s2)となります(単位だけ記載しますと、(m/s)/(s)=(m/s2)となります)。これに加速した物の質量を掛けた物が力となります。例えば加速したものが60キログラムの場合、加速によって1(m/s2)×60(kg)=60(kg・m/s2)=60(N)の力が生まれるわけです。
では、キログラム重をニュートンに換算するにはどうすれば良いのでしょうか?1キログラムの質量をもつ物体が地球上で受ける重力の大きさを、1キログラム重といいます。重力の大きさは質量に重力加速度をかけたものですから、地球上の平均重力加速度の値9.80665m/s2を用いて1(kgf)=9.80665(N)ニュートンと定められています。一般的な計算では9.8ニュートンとされることが多いようです。
つまりキログラム重に平均重力加速度(9.8m/s2)を掛けるとニュートン(N)に換算できるのです。例えば、10キログラム重(kgf)をニュートンに換算すると10(kgf)×9.8(m/s2)=98(N)となります。
引張強さや引裂強さは、シートを地面方向、つまり重力方向に一定速度で引っ張ってどの強さで破断したかを表しています。引張強さは、3cm幅にカットした試験片を地面方向に一定の速度で引っ張りシートが切れた時の強さつまり力を記載しているのです。今まで、キログラム重表記の場合、切れたときの力を重さで表していました。使用上は全く問題ないのですが、キログラム重の場合、例えばエネルギーの計算をするとか、発生する熱量を計算するといった事を行う場合、換算できる単位に変換してやる必要があります。ところが、強さをニュートン表記にすれば、今言った換算作業が軽減されます。そういう意味でも表記方法がSI単位系に統一されたわけです。
最初は、馴染みがないので感覚をつかみにくいと思いますが、今までのキログラム重に9.8を掛けたものと覚えておいて下さい。