産業用シートから生活を彩るシートまで
情報誌みらい

連載記事 環境を考える

この度新たに、物性データの解説≠シリーズものとしてお届けすることにしました。これは、何か皆様に役立つ情報をお届け出来ないかと思案した結果、意外に、物性データについての詳細を判りやすく解説した資料がお手元にないことが多いのではないかと考えたからです。何かの際に活用していただければ幸いと考えております。

第1回 引張強さと伸び率

 唐突ですが、ウルトラマックス®のカタログをお持ちでしょうか?もし、お近くにウルトラマックス®のカタログがありましたら、ご面倒ですがお手元に置いて、本記事をご覧下さい。弊社のカタログには、たいてい色サンプルと併せてその製品の物性データを記載させていただいております。この物性データは、製品を十分に活用していただくために、製品の基本的な特徴を表したものになっています。今回から数回に分けて、この物性データの見方について解説していきたいと思います。第1回目は、引張強さと伸び率について解説いたします。

図1 ウルトラマックス®カタログの見開きと物性項目

 さあ、お手元のウルトラマックス®のカタログを開いてみて下さい。左下の所に、ウルトラマックス®物性データという項目があります。その真ん中あたりに引張強さと伸び率の項目があると思います。図1はウルトラマックス®のカタログを開いたかたちになっています。拡大してある部分が引張強さと伸び率の項目です。まず、@引張強さとは、伸び率とは、について説明します。この部分は皆様もよくご存じだと思いますのでおさらいのつもりでお読み下さい。従って、この部分は読み飛ばしていただいても構いません。次にAそれぞれの単位について説明します。そして、最後にB物性データの規格についてお話しします。

@引張強さと伸び率

 引張強さと伸び率は、テント倉庫などの構造物を作る上での規準となっているデータです。引張強さは、JIS L0208において、「引っ張りに対する強さ」と定義されています。具体的には、幅3cm、長さ30cmの短冊状の試験片を用意し、それを長さ方向に一定速度で引っ張り、破断したときの強さを複数測定し、その平均値をとったものです。長さ方向を製品のタテ方向にとったデータがタテ、ヨコ方向にとったデータがヨコとなっています。

 伸び率は、同じくJIS L0208で「引き伸ばしたときの長さと元の長さとの差の、元の長さに対する百分率。伸度又は伸長率ともいう。」と定義されています。伸度は、元の長さに対して何パーセント伸びたときに破断したかを表しています。式で書きますと下記のようになります。

伸び率[%]=〔(破断時の長さ―元の長さ)/ 元の長さ〕 ×100

 ここでご存じの通り、引張強さ=張力ではありません。引張強力というのは、破断したときの強力ですから、この値で張力をかけてしまいますとシートは間違いなく破れます。普通は、安全係数を見て、引張強さの10分の1ぐらいが張力の目安となります。

A引張強さと伸び率の単位について


  伸び率に関しては、上記式のように%表示ですからわかりやすいと思います。例えば、ウルトラマックス®のタテ方向の伸び率の数値を見ますと25%となっています。右図のようにチャック間の距離は20cmですから、元の長さの125%である25cmまで伸びて試験片が切れたということです。例えば幅10m、長さ20mに縫製されたシートで長さ方向にシートのタテ方向を使用した場合を考えますと、20mの25%である5m以上引っ張ってしまうとシートが破断する恐れがあるということになります。
  引張強さの単位を見ますとkgf/3cmとN/3cmが併記されています。最初のkgf/3cmのkgfはキログラム重と読みます。後ろのNはニュートンと読みます。もともと、kgfの方が一般的に使われていたのでこちらの方が見慣れている方が多いと思います。「1kgfは、1キログラム(kg)の質量をもつ物体が地球表面で受ける重力の大きさ」と定義されています。これに、重力加速度であるgをかけた値がニュートン[N]という値になります。従って、ニュートン[N]とキログラム重[kgf]の換算式は、下記のようになります。

1[kgf]=9.8[N]

 ウルトラマックスの引張強さのタテ方向の値を見ますと、

160[kgf/3cm]=160[kgf/3cm]×9.8[m/s2]=1568[N/3cm]

となっています。ちなみに、/以下の3cmとは、3cm幅での測定データですという意味です。
  繊維の場合、一度に均一な張力をかけるのは難しいため、比較的幅方向に均一に同時に力がかけられる3cm幅での測定がJIS規格で規格化されています。
  なぜ、二つの単位で併記されているのかというと後述のJIS規格が1991年から完全に国際単位系準拠となったため、国際単位系であるニュートン[N]を使用することになりました。しかし、今まで見慣れたキログラム重[kgf]の方が直感的にわかりやすいという意見もあり、現状は併記をしています。
  引張強さと伸び率の関係について述べます。引張強さの値と伸び率の値は1対1で対応しています。これはどういうことかというと、ある引張強さの時の伸び率は1つしかないということになります。正確には引っ張るときと緩めるときでは伸び率の値は異なってしまうのですが、引っ張る過程では、伸び率の値は1つしかありません。右図の様に、ある伸び率の時の引張強さは、グラフから一点しかないことがわかります。安全係数を見た引張強さの10分の1程度の領域では、引張強さと伸び率は、比例関係に近いため、グラフの傾きを求めておくと、伸び率から引張強さが予想できます。こうして定められているのが、引張剛性率です。詳細は省きますが、テント倉庫規準や膜構造物の規準に記載されている引張剛性率はそういう意味を持っています。

B物性データの規格について


  数値データの下にある試験方法の欄には、データを測定するときに準拠する測定方法のJIS規格L1096A法(ストリップ法)が記載されています。JIS規格は、日本規格協会の規格で、Lというのは繊維に関する規格を意味しています。その後のナンバー(1096)は一般織物試験方法が記載されている規格になります。引張強さと伸び率の試験方法は、L1096の8.12に記載されています。8.12にはA法(ストリップ法)とB法(グラブ法)があります。このうち、重布類は、A法(ストリップ法)の記載の中に試験片の作成方法と試験条件が記載されています。それぞれの条件を下記表で示します。この他にも測定温度、湿度条件など各試験方法に共通な項目も細かく定められています。

表1 試験片の作製

繊維の種類

切断採取時の試験片の大きさ

巾p×長さp

試験片の巾

p

試験片の数

密度60本/5p以上
約4 × 約30
3
3
密度60本/5p未満
約5× 約30

表2 試験条件

織物の種類

試験片の巾

p

つかみ間隔

p

引張速度

p/min

低速緊張形
3
20
20±1
  • 通常は表1記載の寸法にまず試験片をカットし、測定する方向の糸を抜くなどして糸目をそれえて表2の試験片の巾に合わせます。

 

連載記事
ページの先頭に戻る
HOMEサイトマップ会社案内製品用途テクノロジー新製品・事例情報誌みらいお問合せ・資料請求よくある質問
Copyright(c)2005、Hiraoka Shokusen Co.、Ltd. All rights reserved